今の時代、だいたいの情報はネットで入手できてしまう。でも、ここのお店の情報はおいそれと手に入らない。ウェブサイトもなければ、店舗前にお品書きを書いたような看板もないのだ。入口にあるハサミのマークがあることから、かろうじて「美容室だろうな」くらいのことは察することができる。その理由を「中身がわかったらワクワクが減っちゃうから」と、鈴木さんは話す。そんな鈴木さんは飲食店を探すときも、食べ〇グのようなサイトは見ないそうだ。誰かの評価ではなく、自分の感覚を信じる。そうした価値観に近い人がakubiに来てもらえたら、鈴木さん自身が髪を切っていて楽しいという。

目立つように看板を出していないのには、もう一つ理由がある。akubiではコロナ渦以前は音楽ライブやトークイベントなどが開かれ、地域の人が集まることもある。「美容室としてだけじゃなく、この場所が街のコミュニティスペースのようになれば…」。そうした鈴木さんの想いが、大々的に美容室の看板を出していない理由だ。

akubiには、“美容室の雰囲気が苦手”だという人もよく訪れるという。取材に伺った日、たまたま前髪を切りに来た女性も、そのうちの一人だと教えてくれた。鈴木さんの朗らかな話しぶりと飾らない人柄が、お客さんの心を緩めてくれるのだろう。

ちなみに店内には、毎月テーマに合わせてラインナップが変わる本棚が置かれている。「本を見に来る人との出会いも楽しい」と鈴木さんは言う。ちなみに、鈴木さん自身は本を一切読まないらしい。そんなakubiが気になった方は、是非一度、ご自身で足を運んでほしい。